ポップな表現からエッジのきいたシャープなデザイン画、味のある作品も作れ、紙以外のものにも刷ることができるオールマイティな版画です。
孔版画は、一般的にシルクスクリーンやステンシルといった型枠の原理を利用した版画をさします。
つまり、版になる面に孔をあけ、そこをインクが落ちるような状態をつくるのです。シルクスクリーンは、たくさんの小さな孔があいているシルクやテトロンといった素材を版にします。
様々な技法によって、その孔を絵柄や模様の部分だけを残して、インクが通らないように目止めします。原紙という紙のようなものを図柄だけを切り抜いてそのままスクリーンに貼ったり、光に当てると水には溶けなくなる乳剤を塗って、絵以外を光りに当て、絵を水で洗い落とす方法などもあります。
(アンディ・ウォーホルは、この技法で現代美術に名を残したといっても良いかも知れません。)
他にも、シルクスクリーンには様々な方法があり、それぞれ独特の表現ができます。
ウォーホルは映画においても動かぬものを延々と撮り続け、“イメージの反復”によってイメージを消し去ろうとしました。1965年からは“芸術家廃業宣言”をして映画制作に没頭しました。
【「ファクトリー(工場)」と呼ばれたスタジオで大量生産】
「私は機械でありたいと思う 機械のように絵を描きたい」 ウォーホル
1963年助手を雇い入れ、工場で大量生産するように絵画を制作。工場生産のように流れ作業で次々と美術作品を作り出しました。ファクトリーはそのうちに麻薬中毒者、性倒錯者、同性愛者が集まるようになり、1976年には、出入りしていた精神異常の女優に銃で撃たれて、瀕死の重傷を負ってしまいます。
ファクトリーのウォーホル 1964~65年頃 ウーゴ・ミュラス撮影
ファクトリーでの仕事の風景
【コピーのコピー】
マスメディアによって再現されたイメージをさらにイメージ化
《16のジャッキーの肖像》1964年
暗殺前後の写真を組み合わせた作品
《ジャッキー》1964年
大統領が暗殺された日に、専用機の中で撮られた写真を借用し反復。写真の粒子の粗さによる不鮮明さが、ジャクリーンの悲劇的な雰囲気を強くしています。
ジャクリーン → ジャクリーンの写真 → 写真をコピーして掲載した新聞・雑誌 → コピーされた写真をコピー
既にメディアによって流され誰でもよく知っている既成のイメージを作品に転用し、新しいイメージに作り変える。
《リズ・緑》1963年
《エルビスⅠ・Ⅱ》1964年
【テーマ「死」】
1963年ウォーホルは、自動車事故・自殺・墜落・人種暴動・電気椅子など死がイメージされる写真を用いてイメージの反復による「惨劇」シリーズを描き始めた。死と結びついた惨たらしい情景の繰り返しはそのイメージを薄れさせ、作品から死にまつわる恐怖や不安が消されていく。
《惨劇》1963年 電気椅子
《緑色の惨事10回》1963年
【微妙に異なる反復】
刷りムラ、版のズレが生みだす絵画的な効果
シルク・スクリーンによってイメージが機械的に反復されていますが、インクの濃い薄いによる刷りムラや版のズレが作為的に作られて反復が微妙に異なっています。ウォーホルは借用した写真の露出を濃く焼き込んだり、ムラやズレなどの偶然性を取り込むことで画面に変化をつけ、作品の絵画的な効果を高めています。